脊髄小脳変性症に鍼灸が効くメカニズム|小脳血流改善と神経保護作用

脊髄小脳変性症(SCD)と診断され、「今の医学では進行を遅らせるしかない」という言葉に、深い不安を抱えていらっしゃる方は少なくありません。ご自身やご家族が、かつてのような自由な動きを取り戻したいと願うのは、至極当然のことです。

そうした中で「鍼灸治療」という選択肢を耳にしたとき、「本当に効果があるのか?」「気休めではないのか?」と疑問を持たれるのは、非常に理知的な反応だと言えます。

長野県須坂市の「森上鍼灸整骨院」では、鍼灸を単なる伝承医学ではなく、最新の検査機器と科学的根拠に基づいた「神経内科専門の鍼灸治療」として提供しています。なぜ、当院の鍼治療が脊髄小脳変性症の症状にアプローチできるのか。その具体的なメカニズムを解説いたします。


小脳・脳全体への「血流改善」というアプローチ

脊髄小脳変性症の核心的な問題は、小脳の神経細胞が変性を起こし、機能が低下していくことにあります。細胞が生命を維持し、本来の役割を果たすためには、十分な酸素と栄養を運ぶ「血流」が絶対に欠かせません。

脳血流量の有意な増加が証明されている

近年のfMRIやPETを用いた脳機能画像解析の研究により、手足や頸部の特定のツボへ鍼刺激を行うと、自律神経(コリン作動性神経など)を介して、大脳皮質や脳深部の血流量が有意に増加することが科学的に証明されています。

当院では、このメカニズムを最大限に活用し、小脳を含む脳全体の血流を活性化させます。血流が増えることで、残存している神経細胞の働きをサポートし、機能の維持・向上を目指します。

エコーで確認する椎骨動脈の血流

当院では超音波エコーを用いて、首の部分から小脳へと血液を送る「椎骨動脈」の血流を直接確認します。どこに血流の滞りがあるかを他覚的に把握した上で鍼を打つため、根拠に基づいた精度の高いアプローチが可能です。


「神経保護作用」とネットワークの再構築(可塑性)

「一度壊れた神経は戻らない」とかつては言われてきました。しかし現代医学では、脳には「可塑性(かそせい)」、つまり残った神経が新しいネットワークを築いて機能を代行する力が備わっていることが分かっています。

神経栄養因子(BDNF)の分泌促進

鍼通電(電気を流す鍼)による適度な刺激は、脳内において「脳由来神経栄養因子(BDNF)」や「神経成長因子(NGF)」と呼ばれるタンパク質の分泌を促進することが明らかになっています。これらの物質は、いわば「神経の栄養剤」であり、細胞をダメージから保護し、傷ついたネットワークの修復を助ける働きがあります。

鍼とリハビリの相乗効果

鍼治療によって脳内の環境を整えた「直後」に、当院オリジナルのリハビリテーションを行うことが極めて重要です。神経が活性化しやすい状態(ゴールデンタイム)でリハビリを行うことで、小脳の機能を最大限に引き出し、新たなネットワークの再構築を強く促します。


インナーマッスルへの直接刺激と自律神経の調整

脊髄小脳変性症の患者様は、体のふらつきを無意識にカバーしようとして、全身が常に緊張状態にあります。特に首周りや腰、股関節の奥深くにある「インナーマッスル(深層筋)」がガチガチに固まってしまうことが、動作をより困難にさせる悪循環を生んでいます。

エコー下で行う「インナー鍼治療」

当院ではエコー(超音波)を用いて、手技では届かない深部の筋肉や神経の状態をモニターに映し出します。安全かつ正確に深層筋の硬結(トリガーポイント)に鍼を届けることで、「軸索反射」というメカニズムを引き起こし、血管を拡張させます。これにより、長年の頑固な過緊張を一気に緩め、スムーズな動きをサポートします。

サーモグラフィで視る自律神経の状態

多系統萎縮症などを伴う場合、睡眠障害や冷えなどの自律神経症状も大きな悩みとなります。鍼刺激による「体性-自律神経反射」は、交感神経の過剰な興奮を抑え、全身のバランスを整えます。当院ではサーモグラフィを用いて手足の皮膚温を撮影し、自律神経が整い、末梢の血流が改善されたことを「可視化」して確認しています。


まとめ:SARAスコアによる客観的な改善指標

私たちは、患者様の「なんとなく良くなった気がする」という主観的な感想だけに頼ることはありません。

世界共通の小脳性運動失調の評価基準である「SARA(サラ)スコア」を定期的に測定しています。脊髄小脳変性症は1年で1〜2点進行すると言われる中、当院のワンクール14回の治療で大幅なスコア改善が見られるケースも少なくありません。事実、当院で通院可能な状態の患者様の10割において、ふらつきや構音障害に何らかの改善が見られています。

科学的なメカニズム、最新の検査機器による可視化、そして数値による客観的評価。これらを組み合わせることで、私たちは「進行を待つだけ」ではない、攻めのケアを提供しています。

脊髄小脳変性症の鍼灸外来

一般的な鍼灸院では行わない「体の状態を客観的に捉える方法」です。

脊髄小脳変性症の方の足部の温度分布を確認する様子

足部の温度変化を確認する検査の一例

「診断はついた。けれど、今の自分の状態がどうなのかは、よくわからない」

「薬を続ける以外に、何を意識すればいいのか、誰も教えてくれなかった」

私たちは、こうした行き場のない不安を抱える患者さんと40年間向き合ってきました。


当院では、サーモグラフィで全身の体温分布を可視化します。 脊髄小脳変性症の方では、 ご本人が感じている歩きにくさやふらつきと一致する形で、 手足の温度分布に左右差が見られることがあります。 その一致を一緒に確認することで、 「なぜ今の動きにくさが出ているのか」を整理する手がかりになります。

この検査には専門機器と解析技術が必要なため、一般的な鍼灸院で行われることはまずありません。 感覚や印象だけに頼らず、今の体の状態を落ち着いて見つめたい方のための情報提供の場として、 ご相談をお受けしています。

参考文献

  • 『東洋医学はなぜ効くのか ツボ・鍼灸・漢方薬・西洋医学で見る驚きのメカニズム』 講談社(ブルーバックス)
  • 『鍼灸臨床最新科学 メカニズムとエビデンス』 医歯薬出版株式会社
  • 『神経内科2013 神経内科診療における鍼灸治療』(Neurological Medicine Vol.78 No.5) 科学評論社
  • 『小脳と運動失調 小脳はなにをしているのか』 中山書店
  • 『脊髄小脳変性症マニュアル決定版!』 日本プランニングセンター

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